モバイル決済とは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を利用して料金の支払いや送金を行い、クレジットカード決済を完了することを示します。モバイル決済について最近見聞きすることが増えてきましたので、モバイル決済の種類や日本やアメリカ・中国における利用率などをまとめて見ていきます。
ちなみに現金を使わない電子決済(日本における市場規模は野村総研によると2023年に114兆円、2017年に比べて5割伸びる見通し)は大きく
- 遠隔決済(オンラインショッピングなど、ウェブ上で完結)
- 近接決済(リーダーにカードやスマホやウェアラブル端末をかざして決済)
の2つに分けることができますが、このうちモバイル決済は2番目に該当します。
モバイル決済の種類
近接決済に分類されるモバイル決済は、利用方法により3つに分けることができます(参考リンク)。
モバイルPOS決済
店舗のスマートフォンやタブレットなどの端末に、専用のリーダーを取り付けて行う方法です。代表的なものにSquare、楽天ペイ、Coineyがあります。
この専用のリーダーを店舗の端末のイヤホンジャックに挿入することで店舗の端末がクレジットカードリーダーとなるので、このリーダーに消費者のクレジットカードをスワイプすることで決済を行うことができます。
スマホアプリ決済
消費者のスマホアプリにバーコードやQRコードを表示させて、そのコードを店舗のPOSのバーコードリーダーで読み取らせて決済する方法です。企業は消費者が会員情報として登録したクレジットカードや銀行口座から引き落としを行う事で決済を完了できます。
このスマホアプリ決済を行うためには、消費者があらかじめその企業に会員情報およびクレジットカード情報・銀行口座情報を登録し、スマホアプリをインストールしておく必要があります。
スマホアプリ決済には、LINEのLINE Payや、中国の「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」などがあります。
スターバックスも「モバイルオーダー&ペイ」というサービスを出していますが、これもスマホアプリ決済に該当します。モバイルオーダー&ペイについては以前こちらのエントリ「モバイルオーダー&ペイを使ったスターバックスのオムニチャネル事例とその意味」にまとめました。
AlipayとWeChatについてですが、中国国内のスマホ決済のうち、55%はAlipay・37%はWeChatが占めているということで、両社合わせて90%以上の規模になります。この巨大なAlipayが今年2018年春に日本に本格進出し、日本人向けのサービスを開始することが2017年夏に発表されました。
Alipayの進出については、「中国スマホ決済「アリペイ」が、2018年春に日本上陸。普及するか無視されるか」というこちらの方のエントリが分かりやすいです。
非接触型ICカードが埋め込まれているスマホを利用
Felicaを利用したおサイフケータイや、Appleの「Apple Pay」、Googleの「Android Pay」などがあります。
Felicaを使える場所(店頭や自販機などを含む)が250万箇所あるということで、日本では大きく普及しています。
おサイフケータイは2004年にドコモが携帯電話に採用して始まり、2016年にはAppleのiPhone7に採用されてさらに利用の裾野が広がりました。日本で流通しているスマホの大半にはFelicaの通信チップが組み込まれているということです。(2017年1月16日日経新聞より)
AppleのApple Payは、米国で2014年10月に開始され、日本では2016年10月に利用可能になりました(iOS10.1のアップデートによる)。
モバイル決済のメリット
クレジットカード決済と比較して、モバイル決済にはどのようなメリットがあるか、消費者と店舗双方の視点でまとめました。
モバイル決済利用の消費者のメリット
消費者としては、クレジットカードを店舗に渡すことなくクレジットカード決済を行うことが可能です。日本国内でカード利用をする際にはほとんど意識することはないですが、カード情報を抜き取られるスキミングの被害に合う確率を減らせます。
端末で読み取られたカード情報は暗号化されて送受信され、カード情報や個人情報は店頭端末に残らない仕組みになっています。
モバイル決済利用の店舗のメリット
従来のクレジットカード利用に比べ、下記のようなメリットがあります。
- 導入が簡単であり安価(高い端末導入費が必要なく、安く購入もしくはレンタル可)
- 決済手数料が安い(3.5%程度)
- 入金サイクルが早い(クレジットカード決済の翌日に支払うサービスも)
- 初期費用や月額費用が安い(無料の場合もある)
特にメリットがあるのが決済手数料です。通常クレジットカード会社に支払っている加盟店手数料は5%程度であることが多いですが、モバイル決済では3.5%程度に抑えることができます。
モバイル支払いとの違い
モバイル決済と間違いやすい決済方法の名称として、モバイル支払い(別名キャリア決済)があります。
モバイル支払いとは携帯電話の各キャリアが行っている決済で、携帯料金と共に買い物の料金を支払う仕組みです。ドコモケータイ支払い、auかんたん決済、ソフトバンクケータイ支払いがあります。
モバイル決済の利用率
日本銀行が店頭でのモバイル決済の動向をまとめた「モバイル決済の現状と課題」を2017年6月20日に発表しています。
モバイル決済利用率は日本6%、米国5.3%、そして中国では98.3%となっています。
日本に関するコメントに
モバイル決済とのリンクが期待される、カード型の各種キャッシュレス決済手段(電子マネー、デビットカード、クレジットカード)は、利用総額は決して多いとは言えないものの、カード自体はかなりの程度普及が進んでいる。
とあります。
なぜ中国でここまでモバイル決済が普及しているのかという点については諸説あります。中国では偽札への懸念が大きかったなどもありますが、私が読んだ中ではこちらの「中国でモバイル決済が普及した ”本当” の理由」という記事が一番納得がいくものでした。
膨大なユーザーを抱えるAlibaba(Alipayを提供)とWeChat(WeChat Payを提供)というプレイヤーが支払いと清算の両方を手がけており、クレジットカード会社を間に入れていないために、手数料を非常に小さくできたという理由です。クレジットカード会社を間に入れる代わりに、ユーザーは銀行口座を自身のAlipayやWeChatのアカウントに紐付けて利用します。
最後に
日本銀行のレポートにあるように、日本では確かにSuicaやEdyなどの電子マネー、デビットカードやクレジットカードは間違いなく普及しています。モバイル決済がこれらを上回る魅力を提供できるか、また間にクレジットカード会社が入っていて手数料が高いこの構造をどうにかできるのかが、これからの利用拡大の鍵になっていくと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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