(読了6分)電通から2016年の広告費推定値の調査結果が発表されましたが、過去の資料とも合わせて目を引いたのが、日本のインターネット広告費シェアが15年間で2.1%から20.8%に成長したという点です。
日本の総広告費は右肩上がりでずっと伸びているわけではなく、2007年の7兆191億円をピークにいったん減少しています(2012年から5年連続でプラス成長になってはいます。本文中にグラフにて示します)。
一方、インターネット広告費は2002年から2016年の15年間で継続的に右肩上がりの伸びを示し、日本の広告費全体に対するシェアも2.1%から20.8%と、非常に大きくなっています。
- 日本の2016年広告市場概況
- 日本の総広告費は、5年連続でプラス成長
- 19年連続でマイナス成長の雑誌媒体の苦境
- インターネット広告費は1兆3,100億円(2016年は前年比+13.0%)
- インターネット広告費シェアが15年間で2.1%から20.8%に成長
- 最後に
日本の2016年広告市場概況
日本の2016年の広告市場の概況については、
- 日本の総広告費(6兆2,880億円)は、5年連続でプラス成長(2016年は前年比+1.9%)
- マスコミ四媒体広告費(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)は2兆8,596億円(2016年は前年比-0.4%)
- 雑誌広告費は2223億円(2016年は前年比-9%)
- インターネット広告費は1兆3,100億円(2016年は前年比+13.0%)
- インターネット広告媒体費(制作費除く)が初の1兆円超え(1兆378億円)
この5点が挙げられるかと思います。この中からいくつかの点をピックアップして見ていきます。
日本の総広告費は、5年連続でプラス成長
日本の2016年の総広告費(6兆2,880億円)は5年連続でプラス成長(2016年は前年比+1.9%)となっています。
2016年の総広告費の伸びの背景には、
- 景気が緩やかに拡大している
- リオデジャネイロ オリンピック・パラリンピックなどのイベント
- インターネット広告がさらに拡大している
これらの理由があります。
また時系列で考えますと、総広告費は日本の経済活動(景気)と関係がありそうだと思っていたところ、2012年までですがとても分かりやすいグラフを電通資料から見つけました。
グラフをそのまま貼らせていただきますが、日本の総広告費と国内総生産(GDP)の推移が相関しているのが分かります。
2013年以降も日本の名目GDPは伸びているので、総広告費も同様にプラス成長しているのもうなずけます。
出典:2012年 日本の広告費
マスコミ四媒体として扱われる新聞・雑誌・ラジオ・テレビですが、それぞれの媒体によって伸び率や減少率が異なります。ここでは各メディアの中から、雑誌媒体を見てみます。
19年連続でマイナス成長の雑誌媒体の苦境
出版月報によると、2016年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比-3.4%の1兆4709億円で、12年連続のマイナスであったということです。
書籍と雑誌の販売金額はほぼ半々で、
- 書籍7,370億円(前年比-0.7%)
- 雑誌7,339億円(前年比-5.9%)
書籍が10年連続のマイナスであったのに対し、雑誌は19年連続のマイナスと、書籍に比べてより厳しい環境にあります。
雑誌は販売金額が前年比-5.9%ですが、販売金額が少なくなれば(=販売部数が減少すれば)出稿される広告金額も少なくなるため、
雑誌広告費は2223億円(2016年は前年比-9%)
ということになっています。
高級ブランドなどは、イメージ訴求の広告を雑誌に出すという考えがいまだに強いですが、費用対効果の明確化が求められるようになってきている(しかもデジタルではかなり正確に費用対効果を算出することができる)中で、いつまで同じように雑誌媒体に広告を出稿し続けることができるのかは疑問です。
ちなみに2016年の電子出版市場は前年比27.1%増の1,909億円ということで、市場規模は順調に拡大していますが、紙の書籍や雑誌を代替するぐらいの規模にはまだなっていません。
一方、講談社のように3期ぶりに増収増益を成し遂げた出版社もありますが、その牽引役はやはりデジタルです。
講談社のデジタル分野の売上高は175億円(前年比+44.5%)と大きく伸びており、講談社全体の売上高の15%のシェアを占める(そして書籍の売上高173億円を超える規模になっている)までになっています。
今後はこの講談社のように、いかにうまくデジタルを取り入れ、会社全体の成長につなげていくかという視点が、書籍・雑誌を扱う出版社に求められますね。
インターネット広告費は1兆3,100億円(2016年は前年比+13.0%)
雑誌媒体が苦戦する中、インターネット広告費は
- インターネット利用者数・閲覧時間の増加
- インターネット通販市場の成長
といった市場環境の変化により、下記のインターネット広告費の伸びと前年比のグラフにあるように、この15年間連続で伸びています。
2002年にはまだ1189億円の市場規模でしたが、2016年には1兆3100億円と、およそ11もの規模に成長しています。
スマートフォン利用者の増加も見逃せません。デジタルネイティブな世代が増え、スマートフォン利用者がPC利用者を追い抜く中、インターネット広告費のデバイス別の配分もスマートフォン向けが50%を超えるようになってきています。
インターネット広告の種類
インターネット広告は、目的・ターゲットに応じて多様な種類の広告があります。大きく分けると
- ディスプレイ広告
- 検索連動型(リスティング)広告
- 成果報酬型(アフィリエイト)広告
というように分類できますが、その中でも
- 画像なのか動画なのか
- PC、タブレット、スマホのどのデバイスに出稿するのか
- ターゲティング / リターゲティングするのかしないのか
などなど、非常に多くの選択肢があります。
具体例として、簡単に認知度か売上かという2点で考えてみますと、それぞれに適した広告は以下のようになります。
広告から認知度を高めたい場合
ディスプレイ広告(広告が表示される回数(インプレッション)などを元に広告費が価格計算される形態)が一般的ですが、その出し先の媒体やデバイスをどうするか、どうターゲティングするか(しないか)などが大きなポイントとなります。
広告を売上に直結させたい場合
検索連動型(グーグルやヤフーで該当キーワードが検索された場合に広告を表示するという形態。リスティング広告とも呼ばれる)広告や、成果報酬型(クリックされた後、一定期間内に購入が発生すればその広告を表示していたサイトに成果が払われる形態。アフィリエイト広告とも呼ばれる)が一般的に効果が高いです。
インターネット通販市場の成長
インターネット広告費が伸びているのは、インターネット通販市場の成長によるところも大きいです。消費者の行動として
- ネットに費やす時間が長くなっている(接触時間の増加)
- 相対的にネット以外に費やす時間が短くなっている(マスコミ四媒体との接触時間の低下)
- ネット通販で積極的に買い物をするようになっている
ということがあるので、企業からすると、買い物をするユーザーを取り込むためにも多くの金額をインターネット広告に割くというのは自然な動向です。
ネット通販市場の成長については、末尾に関連記事としてリンクを張っておきます。
インターネット広告費シェアが15年間で2.1%から20.8%に成長
インターネット広告費は、2002年にはまだ1189億円(日本の総広告費が5兆7032億円であったため、シェアは2.1%)の市場規模でしたが、2016年には1兆3100億円(日本の総広告費6兆2880億円の20.8%)と、およそ11倍に伸びています。
こちらのグラフにまとめています。
青棒で示しているインターネット広告費が、継続して順調に伸びていることが分かります。
最後に
インターネット広告費は順調に伸びていますし、日本の総広告費に占める割合も2割を超える規模となっています。
一方ユーザー視点に立ちますと、ネット上のコンテンツのますます多くが広告に影響を受けるということになります。
ステマ問題や、記憶に新しいWelqなどのキュレーション(というより、単なるコピペ媒体でしたが)問題など、なぜこういうことが起きるかと言えば背後にお金があるからであり、インターネットに流れ込む広告費が増えていくにつれて、また別の新たな問題が起きるのだろうなと思っています。
記事中でも触れましたが、ネット通販市場の成長はこちらの記事にまとめていますので、よろしければお読みください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後もいろいろなエントリを書いていきますので、ぜひお気軽にTwitterのフォローや読者登録をお願いします。