(読了5分)今年に入ってすぐに、「頑張れば賃金が上がるという常識を取り戻す」という連合会長へのインタビュー記事がNHKのサイトに上がっていました(今は削除されています)。
私が引っかかったのが、「頑張れば」という点です。
「頑張る」というとどうしても「量=時間の投入」を考えてしまいます(長時間労働)。
そうではなく、労働者個人の単位では付加価値を創出することおよび希少性を身につけることによって、そしてそれを評価してもらうことによって賃金が上がると考えています。
賃金の決定要因
企業と個人、そしてマーケットそれぞれの要因を考えます。
企業
安倍政権が毎年、経済団体に賃上げ要請を行っていますが、これは「労働分配率を適正に調整(=向上)すること」が目的です。
2016年末には2017年の春季労使交渉を念頭に賃上げ要請を行っていますが、これは4年連続の要請ということです。
デフレ脱却のためには賃上げも必要なので(仮にインフレ率が3%になるとすると、賃金も3%上がらなくてはならないですし、何より賃上げがないと消費が伸びないですよね)、このように要請しています。
労働分配率とは
付加価値のうち人件費の占める割合(Wikipediaより)
ですので、単純に
- 労働分配率が高ければ労働者が多くの賃金を得る
- 労働分配率が低ければ労働者は少ない賃金しか得ることができない
ということになります。
労働分配率が低下している原因としては、
- 企業が生み出した利益を内部留保の形で企業内に留め置いている
- 正規雇用が非正規雇用に代替されている
の2点が挙げられます。
個人
労働者個人としては、もちろん量=時間の投入によってもより多くの賃金を得ることができますが(残業代)、そうではなく、「生産性を伸ばすことで、付加価値を創出する」ことによって、またそれを適正に評価してもらうことによって賃金を伸ばすことがあるべき姿だと思います。
また、それは同時に自身のマーケットでの評価を高めることにも繋がります。
マーケット
労働力も製品やサービスと同じように「財」として扱われますので、
- 市場の中において、その労働の需要と供給が多いのか少ないのか
- どれくらいの付加価値を創出できるのか
- 提供している労働に希少性がどれくらいあるのか
によって、その労働力に対する評価=賃金が決まります(賃金には下方硬直性があるので、通常の財やサービスと同一に扱うことはできないのですが、それでも大きく見ればこのように考えられます)。
1は企業としても個人としてもいかんともしがたいマクロ要因ですが、2と3に関しては個人レベルでも向上させる余地があります。
自分の評価を客観的に知るには
先ほど書いたように「自分が生み出した付加価値を適正に評価」してもらうのは簡単なことではありません。
そのため、マーケット(転職市場)にて自分がどれくらい評価されるのかを把握する必要があります。
そこでは自分が生み出すことのできる付加価値への評価、および自分が提供している労働の希少性への評価がある程度分かりますので、自分を客観的に位置づける指標となります。
と言いますか、転職市場に自分を出さないと判断基準となる情報が極端に少なくなり(同僚の評価や他社における知人の評価ぐらいですが、具体的な賃金=年収はなかなか聞けないですよね)、評価が難しくなります。
転職を考えていなくても、自分の評価を客観的に知るために転職市場に自分を出すのは大切なことだと思います。
希少性について
転職市場の中で見落とされがちな考え方ですが、
希少性
というのは重要なポイントです。
例えば「英語ができる」というスキルは、もちろんそのレベルにもよりますが、ただそれだけで今だにプラスの評価対象です。
しかしもし近い将来、誰もが機械を通じて「英語ができる」ようになってスキルが普遍化すると、このスキルはそれだけでは評価を生まなくなってしまいます。
プロジェクトマネジメントスキルなど、定量化しにくいスキルは今後もしばらくは何かによって代替されないと思いますが、それにしても自分が身につけている・身につけようとしているスキル(スキルの組み合わせという考え方もあります)は、今後も評価されるものであるのか=希少性を持つものなのか、という点は意識していく必要があると思います。
最後に
労働者としては、
- 生産性を伸ばす
- 付加価値の創出が増える
- 希少性を身につけ、(企業・マーケットに)適正に評価される
という流れで賃金が上がるのが望ましいですね。
もちろん、仕事の構造的に、また会社の仕組み的に、この流れを起こすのが難しい立場や環境があることも分かっているのですが、それにしても、決して「労働時間を延ばす」ことだけで賃金が上がってほしくないと思っています。
一方企業にはもちろん労働分配率を上げてほしいところで、トランプ次期米大統領による口先介入(その対象は賃金に関してではなく、国内に雇用を、という点ですが)が意外にもうまくいっているように見えるアメリカが、この点については羨ましいなと思います。
仕事に関しては、こんな記事も書いていますので、よろしかったらご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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