(読了4分)インバウンド需要に沸いた2015年から一転、百貨店の業績が厳しさを増しています。
百貨店大手の2016年度業績見込み
百貨店大手3社と言われる三越伊勢丹ホールディングス、J・フロントリテイリング、高島屋に、エイチ・ツー・オーリテイリングを加えた2016年度の業績見込みは下記の表のようになりますが、
百貨店(グループ) | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
三越伊勢丹ホールディングス | 1兆2500億円 | 240億円(当初見込みは370億円) |
J・フロントリテイリング(大丸松坂屋) | 1兆1170億円 | 450億円(当初見込みは500億円) |
高島屋 | 9250億円 | 340億円(当初見込みも340億円) |
エイチ・ツー・オーリテイリング | 9020億円 | 222億円(当初見込みは250億円) |
この表にも現れていますように、特に三越伊勢丹が厳しいという話をよく見聞きします。営業利益の見込みが当初の370億円から240億円に、ということは35%の減少ということなので、非常に大きな数字です。
2016/10/28 三越伊勢丹、今期純利益を51%減に 免税品低迷で下方修正
2016/11/9 苦しい三越伊勢丹、地方4店抜本改革の正念場
2016/11/20 三越伊勢丹、「鉄壁」基幹3店が一斉売上減の異常事態…
三越伊勢丹不振の原因
百貨店不振の原因として、消費者の視点からは
- 消費者が求める品揃えができていない
- 消費者の購買行動の変化(オンライン購買や、モノよりコトを求める世代)・多様化
などが言われています。
一消費者として、私はもともと百貨店にはあまり行かないのですが、行くとしたらお歳暮などの贈り物など「その百貨店の包装紙を求める」シチュエーションでしょうか。
どういう品揃えになったら百貨店に行こう、と思うかはちょっと分からないですが、百貨店の商品カテゴリーの側から見ると、不振の直接的な一番の原因は
衣料品の不振
これに尽きます。
百貨店ビジネスの商品カテゴリーの売上の内訳は、各社や時期によってもちろん異なりますが、ざっくり言うと
1位:衣料品(30%)
2位:食料品(25%)
3位:雑貨(20%)
というようになっており、食料品や雑貨も昨年と比べるとマイナスですが、衣料品の売上のマイナスが全体売上にもたらす影響が大きいことが分かると思います。
2016年は秋ぐらいまで衣料品は多くの月で昨対割れが続いており、特に夏場は-11%(日経MJより)となっていましたが、そのため衣料品に依存度が高い百貨店には厳しい状態となっています。
週7日営業を維持できなくなるのではないか
こちらの記事にありましたが、
三越伊勢丹HDが新たに店舗のあり方を検討するのは、札幌市の丸井今井札幌本店と札幌三越、新潟市の新潟三越と新潟伊勢丹、静岡市の静岡伊勢丹。このうち札幌、新潟の4店は、同じ市内に店舗が併存し、客が分散するなど営業効率が悪くなっていた。
ということで、特に新潟では2店舗を維持するのが厳しいのではないかと思います。
いずれの店舗も現時点で閉鎖を前提とはしていないという。
というなので、テナントの入れ替えを行うことなどはもちろんですが、
- 営業時間の短縮
- 営業日数の削減
のどちらか、もしくは両方を検討していかなくてはならなくなると思います。
どちらにせよ、既存テナントとの交渉(営業時間の短縮や営業日数の削減により、テナント側は自社の従業員の配置転換や、勤務・雇用形態の変更などが必要になる)にもよると思うのですが、都市部の有力店舗が地方店を支えるという構図の維持が難しくなっている今、この新潟に限らず地方店は厳しい状況にあります。
営業時間の短縮は、三越伊勢丹に限らず他社も
2016/2/8 高島屋が日本橋店を含む3店舗で営業時間を短縮
このように行っていますが、営業時間の短縮ではもうまかない切れないところまできているのでは、と思うので、「営業日数の削減=地方百貨店は週7日営業を維持できなくなる」と考えています。
三越伊勢丹は艦これとのコラボなどいろいろな顧客層を取り込もうとしていますが、業態自体もいわゆる「場所貸し(Ginza SIXなど)」のように変化していくのか(場所貸しは、一般消費者がイメージする「いわゆる百貨店」ではないですが)、気になるところです。
百貨店苦戦の背景には、専門店の伸張などと共に、もちろんネット通販の規模の伸張・当日配送など充実し続けるサービスも一因としてあります。
こちらもよろしければお読みください。
www.yellowpadblog.com
www.yellowpadblog.com
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
■参考記事
2016/10/4 Jフロント、通期は減収減益予想に下方修正 インバウンド不振
2016/10/7 高島屋、17年2月期売上高予想を下方修正 販管費圧縮で営業益確保
エイチ・ツー・オー リテイリング(阪急・阪神)