(読了4分) ちなみに世界1位の農作物輸出国はやはりダントツでアメリカです。大豆、とうもろこし、小麦を中心に1330億ドルを輸出しています。
TPPの雲行きが怪しくなってきましたが、メリットデメリット含め、TPPが日本の農業に大きな影響を与えることは間違いありません。そこでふと「世界1位の農作物輸出国はアメリカだろうけど、2位はどこで、日本はどれくらい?」と思い調べてみたところ、意外な国でしたのでこちらに書きました。
国土面積に必ずしも比例しない農作物輸出国ランキング
国土面積が大きい中国(国土面積は世界3位ですが、農作物輸出額では世界6位です)やブラジル(国土面積は世界5位ですが、農作物輸出額は世界3位です)を抑えて、実は世界2位の農作物輸出国は
オランダ(国土面積は世界137位、九州と同程度の大きさ)
なのです。
意外ですよね。以下、ドイツ、ブラジル、フランス、中国、カナダ、、と続いていきます。
それでは日本はと言いますと、農作物輸出額では世界47位(国土面積は世界61位)となっています。
国土面積が世界137位と狭いオランダが農作物輸出額では世界2位なので、国土が狭いとは言えオランダよりは広いし、日本はもっと上位を目指せるんじゃないの?と思ってさらに調べました。
日本とオランダの農業条件の比較
農林水産省が作成している農林水産物・食品の輸出の現状という資料(PDF)によりますと、日本とオランダの農業条件は下記のように比較することができます(一部情報を追加)
この表からは、オランダの農家1戸あたり農地面積が日本より大きいことから、オランダの方が集約されている分効率が高いのだろう、ということが推測できます。
オランダは穀物自給率が14%と、日本の28%よりも小さいという点も特徴として挙げられます。それにもかかわらず世界第二位の農作物輸出大国ということは、
付加価値の高い集約型の品目に生産を集中し、穀物は輸入に依存している
ということが分かります。
オランダの農業の特徴として他の視点からは、
- 輸出の8割は陸続きのEU加盟国(関税が無く検疫上の制約も小さい)へ
- 農作物の輸入も輸出額の約3分の2に相当する額に上っている→加工貿易・中継貿易が盛ん
という点が挙げられます(上記の農林水産省の資料より)。
オランダの立地のメリット
オランダはこちらの地図のように、ヨーロッパで大きな内需を抱えるドイツやフランスと地続きであり、近いというメリットがあります。
アムステルダムからパリまで514キロ、ベルリンまでは655キロと、東京から京都よりも少し遠い程度ですので、輸出に適しているというメリットがあります。
逆に言えば地理的条件として輸入にも適しているということであり、穀物自給率が低い分はこれら近隣国からの輸入で補っていることが分かります。
また、オランダはヨーロッパ有数の貿易港を抱えているため、加工貿易・中継貿易にも適しているということがあります。
特定品目への集中
オランダは例えば野菜では
トマト、パプリカ、きゅうりなど、少ない品種に集中しています
狭い国土なのに世界第2位の農業大国オランダ 日本が学べることはある?
ということで、特定の品種に生産を集中しているようです。
規模の集約やノウハウの蓄積といった生産現場的な視点や、生産物を消費地まで運ぶ物流面といった視点からは、品種が少ないことには効率を上げやすいというメリットがあります。
もちろん、特定品目に集中することによるリスクもあるはずですが、今のところ(というか長年にわたって)その集中戦略がうまくいっているということなのでしょう。
一方日本はと言うと、
日本ではイチゴだけでも250以上の品種が登録されており、しかも品種ごとに細かく栽培方法が異なっている。(略)しかも、味の良さを第一にして育種しているから、栽培管理の手間(コスト)を削減するような思想で作られている品種もほとんどない。オランダの農業を真似しても日本の農業が強くならない理由
ということです。
確かにスーパーにはイチゴ1つとってもいろんな品種のイチゴがあり、消費者としては「いろんなイチゴがあるな」ぐらいにしか思っていませんでしたが、それら多種類のイチゴが作られるということは、一方での効率を犠牲にしていたんだなと感じました。
日本の農業のこれから
2020年に農作物の輸出を1兆円にするという目標を掲げていましたが、先日さらにそれを1年前倒して、2019年に達成するとしています。
それを達成しさらに農作物輸出額を増やしていくには、地理的条件を変更することはできないため、やはり
- 農地の集約化による効率化
- 品種の絞り込みおよび高付加価値化
が必要なんだと思いました。
農業は高齢化や後継者不足といった別の大きな問題も抱えていますが、前者は例えば耕作放棄地の活用などにより、後者は制度なりの何かしらのインセンティブおよび知見の共有などにより、実現していくことができるのでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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