アメリカの調査会社ガートナーが、「Gartner Predicts 2017」を11/11に発表しました。
ガートナーは毎年このような展望を発表しており、今回発表された10件は「IT部門およびユーザーに影響を与える重要な展望」にフォーカスされています。
その中で特に興味深かったのが10件のうちのトップ3に入っていた
- 2020年までに、1億人の消費者が拡張現実を利用してショッピングを行うようになる。
- 2020年までに、Webブラウジング・セッションの30%は画面を使用せずに行われる。
- 2019年までに、ブランド保有企業の20%は自社のモバイル・アプリを放棄する。
の3つの内容でした。
どれも興味深い展望なのですが、ここでは本文のタイトルでもあります「2020年までに、1億人の消費者が拡張現実(AR)を利用してショッピングを行うようになる。」について、ショッピングに関連する部分において現在はどのようなサービスがあるかを調べてみました。
そもそも拡張現実(AR)とは
拡張現実(Augmented Reality)とは、「現実世界に、仮想的なモノや情報を導入する表現方法」です。
身近な例ですと、スマホ画面でカメラを起動して現実の世界を映した際に、その場に無いモノや情報を現実世界に重ねて表示する、という仕組みです。
最近ですと大ヒットしたポケモンGOが、「現実世界に仮想的なモノや情報(キャラクターやジムなど)を表現する」という、まさにARの技術を利用したサービスになります。
ちなみにバーチャルリアリティ(仮想現実、VR)は、「デジタル上のモノや情報を、あたかも現実であるかのように見せる表現方法」ということになります。
ヘッドセットをつけて、デジタルの世界に高い没入することができます。都内ではVRを体験できる場所も少しずつ増えていて、こちらの記事に詳しく取り上げられています。
インテリアシミュレーションアプリ
ガートナーのプレスリリースにおいて、
ARアプリケーションを使用して物理的な世界の上にデジタル情報 (テキスト、画像、動画、音声) を重ねることは、店舗内外の両方において、より深い顧客エンゲージメントを得る手段の1つとなります。例えば、消費者は、自宅でIKEAのカタログ・アプリを操作して、気に入った場所に家具を「配置」できます。
という箇所がありました。
インテリアに関しては、下記の2つのサービスが有名かと思います(そしてちょっと調べてみたら、大塚家具もARに取り組んでいました)。
IKEAカタログ
こちらは2013年から海外では展開していたようなのですが、日本ではこの8月に提供開始されたアプリです。
従来はカタログアプリは単に紙のカタログをアプリ上で見るだけ、というものだったのですが、AR技術を使い、自分の部屋の中にイケアの家具を仮想的に配置できるという仕組みになっています。
部屋のどこかに紙のカタログを置いてスマホで見ると、現実の眼前には存在しない椅子や机が、スマホ画面上のそのカタログがある場所に立体的に表示されるという、なかなかおもしろい体験をすることができます。
リビングスタイル
無印良品やFrancfrancが採用しているインテリア試着アプリ「リビングスタイル」というものがあります。
リビングスタイルはこちらの記事によると
- 無印良品やFrancfranc、島忠など20ブランド、30万点の商品を3Dデータ化。
- 導入企業の1社は売上高6億5000万円のうち、10%は3D経由で、購入者は約5000人に上る
ということで、3D経由であった購入者は、恐らく購入率も高かったであろうことが想像できます。
またこのリビングスタイルを運営している会社は、ブランド横断で家具を選び、自宅で家具の配置を3D的に可能にしてシミュレーションできるアプリ(RoomCo:ルムコ)も開発しており、今後ますますこの方向性は強まっていくのだろうと思います。
ルムコが対応しているのは14ブランド30万点ということで、大きな規模となっています。
ルムコ上で好きな家具の組み合わせを見つけ、各ブランドのサイトに移動して購入するという流れです。
その他
ベガコーポレーションの家具サイト「ロウヤ」は3000点を揃え、年間2800万人が訪れる規模ということです。
また2016年3月期の連結売上高は91億円、客単価は1万3000円となっており、家賃がない分家具を安くしています。
データ生成の必要性
いずれのアプリにしろ、当然3Dデータを必要としますので、従来の紙のカタログよりも撮影やデータ処理に大きな工数が掛かります。
一方、家具は新しいユニークな形の製品が日々登場するジャンルではないため、例えば既製品のサイズ違いや色違いなどであれば、データの転用が可能というメリットもあります。
雑誌やカタログなど紙媒体にも大きなチャンスがある
雑誌やカタログなど、どうしても文字と画像という二次元の情報しか伝えられない媒体であっても、ARを使うことによって大きなチャンスが生まれます。
スマホで画像をスキャンすることでARを立ち上げれば、サイズ感から360度の情報まで読み手が把握することが可能になるので、紙媒体の新たな活路となりえます。
全て自社で管理している媒体に比べ、多くのメーカーやブランドの製品が掲載されているような雑誌では上述のようなデータ作成の工数が大きくなりますし、各社の協力が必要になってくるので取り組みも大変になってきますが、掲載製品を自社に限っているような場合には比較的早く取り組めるはずです。
観光地のPRも新しくなるはず
去年9月にHISが発表した
これも、紙媒体であるパンフレットとARを組み合わせたものです。
パンフレットの進化版として、各観光地に誘致する力が3Dの方が(この場合は動画ですが)紙媒体よりも強いことは疑いないので、おもしろい取り組みだと思います。
このパンフレット、最近の事例がいまいち見つからなかったのですが、あまり評判がよくなかったのでしょうか。引き続き調べてみます。
ユーザー側の負担
ユーザーはリッチなコンテンツを体験できるというメリットが大きいのですが、一方のデメリット(負担)としては、それを体験するために特定のアプリをダウンロードしなければならない、ということが手間として挙げられます。
アプリの検索とインストール、そして起動ぐらい、、と思われるかもしれませんが、ユーザーは大きな、かつ直接的なベネフィットが無い限り、なかなかこれくらいの簡単な行動もしてくれないものです。
ユーザーがいかにARを手軽に利用できるようにするかも、今後の普及に向けた課題の一つだと思います。
最後に
ガートナーの予想である「1億人の消費者」という規模感は膨大ですが、今回触れたサービス以外にもアイディアはまだまだあると思います。
興味深いジャンルですので、ショッピングに関連するAR技術、そしてそれをいかに簡単に体験できるようになるかという方法は、今後も見ていこうと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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