黄色いノート

ネット通販/EC、新技術、仕事など、いろいろ書いています

LINEの田端氏がマーケティングについて語った勉強会から私が得た気付き

LINEの田端氏が「スマホ全盛期の今、マーケターが持つべきユーザー接点の考え方」という内容で勉強会に登壇したレポートが、すごい勉強会というリクルートのサイトにアップされていました。

その考えには共感できるところがとても多かったので、アップされていた充実したレポートから自分が特に気になった箇所をいくつかピックアップしてまとめました。

このエントリには私の考えが入っていますし、勉強会での発表内容が気になった方は上記のリンクからレポートを読まれることをお勧めします。かなり長いです。

田端氏のマーケティングについての講演

ユニクロのブランドイメージを上げる方法

部分部分の施策も大切だが、全体として大きく捉えて考えることも大切、という話です。

部分最適の例としては、例えば有名モデルや人気ブランドとのコラボなどはブランド力を上げるための一つの方法だと思いますし、斬新なキャンペーンの実施でも「革新的な新しいブランドなんだ」というイメージを持ってもらうことはできると思います。ただそれらは往々にして一過性のものであり、永続的なインパクトをブランドにもたらすことは少ないです。ずっとやり続けることができればまた話は別ですが。

より永続的なインパクトをもたらすことができる施策として、もっと視野を大きく広げれば

  • 価格戦略
  • 立地(出店)戦略
  • 製造のハロー効果を狙う

など、より根源的なものを思いつきます。

特に最後の点は、どこかの有名なラグジュアリーブランドを買収して例えば「エルメスがユニクロを作っている」というようにするということです。

ユニクロに買収された後にエルメスが現在と同じだけのブランドバリューを保てるかは分かりませんが(たぶん保てないでしょう)、とりあえずユニクロにとってブランドイメージという点でプラスであることは間違いなさそうです。

このような大きな発想を、特にCMO(Chief Marketing Offier、最高マーケティング責任者)である人は持つべきだという話でした。

マーケティング担当者には、オーケストラの指揮者型か職人型かの二種類がいるとしています。

既存媒体を活用したPRに造詣が深い人もいれば、新しいメディア戦略の立案に長けた人もいますし、それぞれのジャンルというか分野に詳しくなりたいのか、それともそれらの全体をより大きな視点で見たいのかという、どちらが上というわけではなく種類が異なるということです。

CMOであれば前者のオーケストラの指揮者型で、広い発想を持てるようにするべきです。

今の消費行動の8割くらいは、実は消費者自身がなぜそれを選んだのかがわかっていない。

後付で理由をつけることはあるけれど、買うときには無意識に、なんとなく、決めている。

特に価格帯が低いような、購買判断を間違えたとしても大きな影響が出ないような低関与商材(洗剤やトイレットペーパーなどの生活消費財や、お菓子やジュースや水など、低単価で機能や品質に大差が無い商品を示す)については、なぜそれを買ったのかという明確な理由はないことも多いです。

しかしそれだけでなく、ある程度考えて買うような価格帯のものであっても

  • 誰かが薦めていたから
  • どこかでいいと聞いたから・見たから
  • なんとなく

というように、「絶対にこれでなければならない」という理由付けが少なくなっているように思います。

価格面や機能面で他を圧倒して飛び抜けている製品が少なくなっているというのも、理由の一つです。

例えばスマートフォンが登場した時にはiPhoneしか無かったと言っても過言ではなく、他を圧倒する素晴らしい製品でしたが、現在は他にも無数の「iPhone like」な製品があります。

「なんとなく」で購買を判断する消費者(私もそうですが)に、どうやって自社の製品を選んでもらうのか、そこにどのように明確な価値・購買の理由を付加するのかということはマーケターにとっての課題ですね。

再現可能な専門性

この話を読んでいて自分のキャリアを考えたのですが、

たとえばトイレタリーの業界のマーケティングをやっている人が、消臭剤とかそういう商品のマーケティングをしていて、シャンプーのマーケティングもできる。それで突然、食品メーカーに行ってシリアルのマーケティングとかもできる。

ある職種で特定の業界に深くコミットするのか、それともある職種の再現性を複数の業界で活かすのか。

どちらもプロフェッショナルであることに変わりは無いですが、今までの自分のキャリアは後者の方で、複数の異なる業界で自分が持つ再現性を活かして働いています。

次の業界に行くかこの業界にまだ行くか、考えないとなと思いました。

消費者はグループインタビューで本音を語らない

私もグループインタビューの効果には疑問を持っていました。それは私自身がグループインタビューに「インタビューされる側」として参加した時の体験理由の一つになっています。

グループインタビューに参加すると交通費や謝礼がもらえるということもありますし、何となく「期待されている」回答をしてしまっているように、また「こうありたい自分」を回答してしまっているように思いました。

何が期待されている回答なのか、参加者はだいたい分かってしまうんですよね。

インタビュアーにもうまい人もいれば下手な人もいて、ある問題に対して、「それではこういうものがあったらどうですか?」などのように聞いたりします。そのような聞き方をすれば、多くの人が「そうですね、あればいいと思います」と答えると思いますが、それが世に出たときに果たして本当に必要なものなのか、何より自分がお金を出して本当に買うのか、というと疑問です。

もちろんインタビューによって新しい発見はいろいろあるのですが、それをどのように活用するべきなのか、どの程度信じていいのか、難しいところがあります。

インタビューは監視カメラなどから見ることができる(インタビューされている人に、観察されていると気付かせない)施設で行なわれることも多いですが、その場に参加して「なぜその発言がなされたのか」という背景ややりとりの文脈を把握せずに結果だけを見ると、間違ってしまう確率が大きくなるように思います。

記事には

男性の場合、「新聞は読みたくない」とか「わからない」とかは、プライドが高くて言えないですよ。だいたい、初対面の人に対して自分の本音をペラペラ話すわけがないじゃないですか。それに、こうあるべき自分の姿と実際の自分の姿の区別もなかなかできていなかったりするから。

というようにありました。

確かにグループインタビューで社会人の男性が「新聞を読んでいますか?」と聞かれた時に、特に他の人が「よく読んでいる」と答えた後では、実際に読むことは週に1回も無かったとしても「読んでいる」と答えることになると思います。

そうすると、インタビュー実施者には「新聞は今もよく読まれている媒体である」という記録が残ります。

回答者は「新聞を読んでいる望ましい自分の姿」を答えたにも関わらず、です。

ハイブランドの服も着るけど、ユニクロも着る消費者

考えてみれば当たり前の話ですが、多くの人が何かしらのブランド製品を持っている一方、ノンブランド製品も生活の中で使っています。自分にとってこだわりのあるところにはよいものを、こだわりが無いところ(その人にとっての低関与商材ということもできます)には適当なものを、という消費行動は普通のものです。

雑誌もハイエンドなものも読めば、リアルな生活に直結するようなものも読むというのが普通ですし、記事では

実際は『VERY』も読むけど『オレンジページ』も読む

と例を出していました。

自分がありたい姿を投影したり非現実的な世界に思いを馳せる場合もあれば、具体的に役立つ生活情報を収集するという場合もあり、「VERY読者だからこう」「オレンジページ読者だからこう」というのは本当にその人の持っている一面に過ぎないわけです。

にもかかわらず、その一面を強調しすぎて「VERY読者の○○だからこういう施策を」というアプローチが強すぎることが多いと思います。

メールの件名は「用件がないのに連絡するな」という無意識のアーキテクチャ

無意識のアーキテクチャという言葉が印象に残りました。

メールは件名をつけなくちゃいけないじゃないですか。件名があるっていうことは、要するに「用件がないのに連絡してくるな」っていうことなんですよね。それは、無意識のアーキテクチャとしてそこに想定されている。

サービス設計者が何の気なしにふと作成した機能や導線が、利用者には大きなインパクトをもたらすことがあります。だからこそサービス設計者はデザインを含めてあらゆる機能や導線を詳細に考えなければならないのですが。

確かにメールの件名は、「件名として端的に要約できるような」内容を入力することを求めています。

仕事ではもちろん問題ないのですが、個人的なやり取りにおいて「ただ話したい」「何となく繋がりたい」という時には具体的な要約を求める件名は不向きで、LINEはこのニーズを深く捕まえているからこそ現在のような立場を築いているということができます。

最後に

「なんとなく」購買を決める消費者が増えている(消費の8割はその理由を説明できないとも言われていました)背景には、とがった製品がとがり続けていられる期間が競合によってどんどん短くなっていることも要因として挙げられます。

商品に限らず、サービスにおいても同様のことが言えそうです。

その中でネットワーク効果を発揮できる商品(みんなが使っているから自分もWindowsを使うことが合理的である、というのがビジネスにおいてはあります)やサービス(LINEなどのSNSはまさに典型です。Aさんが使っていてBさんも使っているから、Cさんも使う、なのでDさんも使う、、という)はいいのですが、そうでない場合には、知恵を絞って消費者の「なんとなく」を「これだから」という決定的な要因に引き上げていかなければならないと思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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