黄色いノート

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アマゾンのホールフーズ買収の意味を無人レジ・アマゾンフレッシュピックアップと考える

米アマゾンが自然食品スーパーマーケットチェーンを運営する米ホールフーズを137億ドル(1兆5200億円)で買収すると6月16日に報じられました。

食料品ビジネスは全米で6750億ドル(74兆8600億円)という巨大な市場規模であり、アマゾンもAmazon Fresh(アマゾンフレッシュ、食品配送サービス)で参入していましたがそれを大きく加速させる動きで、ウォルマートとより熾烈な競争に突入していくことになります。

買収の目的や、アマゾンの既存サービスとどのように絡んでいくことになるのかを見ていきます。

オムニチャネル戦略を推し進めるアマゾン

アマゾンがホールフーズを買収する目的は、その店舗網

高級オーガニック食品を扱うホールフーズは、価格が高くてもオーガニックな良いものを(高くてもよいので)買いたいと考える高級志向の消費者、すなわち消費者の所得水準が高めの地域をターゲットにしているため、全米の立地のよいところに440店舗を展開しています。

アマゾンがホールフーズを買収することで狙っているのは、食品小売分野での実際のオペレーションの学習やブランディング(ホールフーズは、365 Everyday Valueというプライベートブランドを持っています)などはもちろんあるでしょうが、一番大きいのは全米に広がる440店舗が持つ物流網であるはずです。

この440店舗の物流網を手に入れることで、アマゾンは自社が行なっているアマゾンフレッシュの配送網を強化することができますし、Amazon Fresh Pickup(アマゾンフレッシュピックアップ、生鮮品を店頭で受け取るサービス)という、シアトルの2店舗で実験的に行なっているクリックアンドコレクトサービス(ネットで注文して店頭で受け取るサービス)を全米に拡大することができます。

食品はセンター物流方式ではなく各店舗からの配送が適する

アマゾンフレッシュで食品の配達を迅速に行なうには、それらの商品を取り揃えた物流センターもしくはスーパーマーケットを消費者の近くに物流拠点として設置することが必要ですが、ホールフーズの店舗を物流拠点とすることで消費者に素早く食品を届けることができるようになります。

日本でも西友(2000年開始)やイトーヨーカドー(2001年開始)やイオン(2008年開始)などの大手がネットスーパーを展開していますが、2009年に開始されたサミットネットスーパーは2014年10月に中止されています。

イトーヨーカドーやイオンなどは各店舗から消費者に配送する方式ですが、サミットネットスーパーはセンターから独自の配送網で配送する方式を取っていました。そのサミットが撤退したということは、食品におけるセンター物流方式の難しさを示していると思います。

それは恐らくアメリカのアマゾンにしても同様で、生鮮食品に関しては各地の物流倉庫からの配送よりも各スーパーマーケットからの配送の方がよいと判断し、消費者(しかも高級な食品を購買しようとする優良な消費者)の近くに立地するホールフーズの店舗を物流拠点として使っていくはずです。

ついで買いを促進するお店での受け取り

消費者に注文品をお店に取りに来てもらうアマゾンフレッシュピックアップは、そもそも消費者の近くにお店がないと消費者は受け取りにいけませんが、これからはホールフーズの店舗に来てもらうことができるようになるため、現在実験中のシアトルの2店舗から一気にサービスを拡大することができるようになります。

消費者に注文品をお店に取りに来てもらうのは、消費者についで買いをしてもらいたいという事業者側の思惑がありますが、ホールフーズでは「全米向けのネットには載せられないが、一部地域限定で販売している食品(やそのセール)」があるはずなのでお店に来てもらうことはアマゾンの利益に繋がります。

生鮮食品をお店でピックアップするという分野では、多くの店舗を全米に展開しているウォルマートがその店舗網を活かして先行しているため、アマゾンがこれを追いかける形になっています。

アマゾンからすると配送費を削減することにも繋がります。物流センター間で物を運んだほうが、物流センター(もしくは店舗)から消費者個人宅まで物を運ぶよりも遥かに低コストで行なうことができるためです。

アマゾンはなぜ食料品ビジネスの分野に進出するのか

食料品の購買頻度はその他のジャンルに比べて高いため、食料品ビジネスを押さえるとアマゾンはより多くの顧客接点の機会を持つことができ、より消費者をアマゾンに抱え込むことができるのが理由の一つだと思います。

生鮮食品は毎日とは言わないまでもかなり高い頻度で買われるため、そこでのよい購買体験を自然に少しずつ消費者の中に刷り込んでいってアマゾンの顧客化し、その他のジャンルの製品を購買するときにアマゾンを想起してもらうことができるようになります。

食料品ビジネスの分野は一般的に利益率が低いため、スーパーなどで消費者がお店で買って持ち帰ることを従業員が代替する(消費者宅に配送する)と利益を出すのが難しいと考えられてきたため、この分野はネットの進出が遅れていたということももう一つの理由です。

先ほども述べたようにネットスーパーというサービスは拡大していますが、アマゾンはホールフーズの買収で440店舗という物流拠点を持つことで、このサービスをさらに早く拡大させることができると見込んでいるはずです。

アマゾンはAmazon Go(アマゾンゴー、レジ不要の無人AIコンビニエンスストア)を2016年12月に発表し、2017年の初めにアマゾンフレッシュピックアップを実験しているのと同じシアトル地区に、アマゾンの従業員を対象としてオープンました。

アマゾンはアマゾンゴーを2000店舗に拡大するということを発表しているので、今回のホールフーズ買収によって得られる店頭のノウハウやオペレーションなどがこのアマゾンゴーに活かされるということは十分ありますし、一方逆にこの無人AIコンビニの仕組みがホールフーズに展開され、ホールフーズからレジが無くなるということもあるかもしれません。

最後に

オンラインの巨人であるアマゾンはオフラインにもどんどん進出しており、オムニチャネル戦略を推し進めています。

逆にオフラインの店舗から始まったウォルマートはオンラインへの対応が遅れて苦戦していますが、Jet.Comを買収して以降最近はネット通販が大きく伸びてきているという話も聞きます。

ヤマトの配送時間帯変更が本日から始まり、各社がサービスレベルを変更しなければいけない中、アマゾンが日本でもオフラインの店舗網を持つ企業を買収してそこを物流拠点としても使うということは十分考えられます。

オムニチャネルはこれからもますます多くの分野で進んでいくので、引き続き見ていきたいと思います。

ヤマトの配送時間帯変更により、当日配送サービスを変更する企業のまとめはこちらのエントリがあります。

www.yellowpadblog.com

アマゾンの収益を支えるロイヤル顧客であるアマゾンプライム会員数を推定したエントリはこちらになります。

www.yellowpadblog.com

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