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黄色いノート

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アメリカ大統領選挙に見る新聞の影響力低下について

(読了6分)アメリカの新聞は日本の新聞と異なり、自紙の政治的スタンスを明確に打ち出しているところが多く、今回の大統領選挙でも多くの新聞社がドナルド・トランプ支持/不支持、もしくはヒラリー・クリントン支持を打ち出していました(支持者を打ち出していない新聞はありましたが、ヒラリー不支持を打ち出していた新聞はありませんでした)。

今回の選挙と前回の選挙を比較し、新聞が投票に与える影響力の低下について見てみます。

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どの新聞が、いつ、誰の支持/不支持を表明していたのか

USCB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)が、どの新聞がいつ誰の支持/不支持を表明していたのかをまとめていましたが、それが非常に興味深い内容でした。

  • アメリカ大統領選挙ではトップ100の新聞社のうち実に57社がヒラリー・クリントン支持を打ち出した一方、ドナルド・トランプ支持はわずか2社(そしてトランプ不支持が3社)
  • 部数の合計で見るとヒラリー支持1,310万部 + トランプ不支持324万部 vs トランプ支持32万部と、圧倒的な開き
  • それでも有権者の得票数は拮抗し、総数ではヒラリーが多いものの選挙人制度によりトランプが当選、次期大統領に

支持・不支持の新聞社の内訳を、前回2012年の大統領選挙はどうだったかで見てみると、

  • 2012年の選挙でバラク・オバマ(民主党)を支持していた40紙は、ほぼ全てが引き続きヒラリー(民主党)を支持
  • 一方、2012年の選挙でミット・ロムニー(共和党)を支持していた35紙のうち、今回もトランプ(共和党)を支持したのは2紙のみ

ということで、いかにトランプが各紙から支持を得られていなかったかが分かります。

発行部数全米トップ(288万部)のUSA Todayは、9月30日の紙面において明確に「トランプには大統領を任せられない」と不支持を掲げています(ヒラリーを支持している訳ではありません)。

そこで使われている言葉は、例えば下記のようにとても強いものでした。

He is erratic.
He is ill-equipped to be commander in chief.
He traffics in prejudice.
His business career is checkered.
He isn’t leveling with the American people.
He’s a serial liar.

また発行部数全米2位(227万部)のThe Wall Street Journal、5位(58万部)のNew York Postは共に特定の候補を支持・不支持していないものの、発行部数全米3位(190万部)のThe New York Timesおよび4位(67万部)のLos Angeles Timesは共にヒラリー支持を掲げており、トランプ支持を掲げたLas Vegas Review-Journalはずっと下って発行部数は全米25位(23万部)です。

前回2012年の大統領選挙ではどうだったか

オバマとロムニーの間で争われた2012年の大統領選挙ですが、

  • オバマ支持は41紙、1,001万部
  • ロムニー支持は35紙、648万部
  • 支持無しは23紙、703万部

ということで、オバマの方が多くの新聞に支持されていましたが、今回の選挙よりは双方に近しい数でした。また、どちらかの候補を不支持としていた新聞はありませんでした。

得票数はWikipediaによるとオバマ6,600万(51%)、ロムニー6,100万(47%)となっており、獲得選挙人こそ332人対206人と大差がついたものの、得票数自体にはそこまでの差はついていませんでした。

新聞からの支持が圧倒的に強かったヒラリーの敗北

前回2012年の大統領選挙から「新聞による支持/不支持」という点だけ取り出して考えると、1,634万部に及ぶヒラリー支持およびトランプ不支持に対し、わずか32万部のトランプ支持であったため、今回はヒラリーが得票数において圧勝していていいはずです。

クリントン氏の得票数リード、200万票超に拡大 米大統領選」というニュースがちょうど今日流れていましたが、それにしても前回の大統領選挙から比べて考えると、テレビなど他のメディアが前回と同様であったと仮定して(今回新聞がヒラリー支持一色の中で、テレビなどのメディアが前回と比べて大きく傾向が変わったということは無いはずで、この仮定は外れていないと思います)、

新聞が投票に与える影響力が低下している

と結論付けることができます。

いくつかの新聞をネット上で見てみたのですが、上記のように発行部数全米トップ(288万部)のUSA Todayの強い論調での不支持や、支持/不支持を表明していない各紙もやはりトランプに対する警戒感が出ていたように思います。

それにも関わらず、トランプが勝利しました。

新聞に代わり影響力を持つようになったメディア、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)

それではなぜトランプが勝利することが出来たのか、それは明らかにSNSの力によるものです(今回は上記の仮定のようにテレビなど他媒体には触れずに考えています)。

トランプ自身もインタビューの中で

米大統領選の勝因はソーシャルメディア

と言っていますし、選挙戦において多額の資金をオンラインに投入したことも分かっています。

SNSもデマニュースの拡散などでいろいろと問題になっていますが、

Facebookが米大統領選の結果に影響?--ザッカーバーグCEOや幹部の見解は
トランプ大統領を生み出したのはフェイスブックか? それともメディアか?
Donald Trump Won Because of Facebook(英語記事)

大きな影響力を持つようになってきているのは間違いありません。

最後に:日本においてはどうなっていくのか

日本新聞協会によると、2015年の新聞発行部数は4,425万部と、10年前の2005年の新聞発行部数5,257万部からは減少しているものの、今でも非常に多く発行されています。

またこちらのGarbagenewsによると、発行部数は

1位:読売新聞902万部

2位:朝日新聞658万部

3位:毎日新聞309万部

と、上位の各紙はそれぞれにおいて全米発行部数1位のUSA Today(288万部)よりも多いという、ものすごく大きな規模の媒体であることが分かります。

冒頭で述べたように、日本では各紙が政治的なスタンスを明確にはしていないですが(読んでスタンスは分かりやすいとはいえ、個人的にはスタンスを明確に表現してくれた方がそれに乗っ取った言説だということが分かり、好ましいのですが)、日本においても各紙が旗幟を鮮明にして指示/不支持を表明し、しかもそれが投票行動には影響を及ぼさなくなる、という未来があるのでしょうか。

SNSの影響力が大きくなってきているのは日本も同様ですし、ポジティブな内容よりもネガティブな内容の方がシェアされやすい、デマ情報も急速に拡散される(そして真実の後追いが間に合わない)ことなど、SNSの影響力についてはまた調べてみたいと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後もいろいろなエントリを書いていきますので、ぜひ読者登録をお願いします。