読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

黄色いノート

ネット通販/EC、新技術、仕事など、いろいろ書いています

アマゾンがハードルを上げる「消費者の期待値」 - 配送

アマゾンがPrime Now(プライム・ナウ)の対象エリアを拡大

f:id:yellowpad:20170125112155j:plain

(読了6分)アマゾンがPrime Now(プライム・ナウ)の対象エリアを東京23区全区(一部地域を除く)に広げることを11月15日に発表しました。

このニュースを知って最初に思ったのは

「これで対象地域の人はますます便利になるけれど、配送に対する消費者の期待値がさらに高くなっていくな」
「その高い期待に応えるべく、事業者にもさらにプレッシャーがかかるな」

ということです。

商圏へのアクセスが概ね良好な東京23区においても、注文後1時間もしくは2時間で配送するということは過剰なサービスではないかという気もしますが、既にその現実がありますのでその疑問はひとまずここでは置いておきます。

アマゾンのPrime Now(プライム・ナウ)について

Prime Now(プライム・ナウ)は製品の注文から1時間以内に配送をする、プライム会員(年額3,900円で加入可)向けのサービスです。

Prime Now(プライム・ナウ)の利用には下記のようないくつかの条件がありますが

  • 「Prime Now」専用アプリ(iOS、Android)をダウンロードし利用する
  • 「1時間以内配送」は配送料金が税込890円かかる(2時間単位の配達時間を指定する「2時間便」の配送料金は無料)
  • 注文は1回あたり2,500円(税込)以上から(製品数は1個からでも注文可能)
  • 対象製品はアマゾン取り扱いの一部(65,000点)

消費者からすると極めて便利なサービスであることに疑いはありません。

その証左に、アマゾンから

アマゾンはプライム・ナウの利用者数を明らかにしていないが、サービス開始から順調に増えているようだ。「1度プライム・ナウを使った方のうち、6割がリピートしている」(永妻事業部長)

アマゾン「1時間超速便」はここまで進化した(2016年11月16日)http://toyokeizai.net/articles/-/145297

というコメントもあります。

1時間以内配送の利用者か、2時間便かの内訳は分からないですが、サービスに対して6割のリピートという数字は驚異的なものです。

私自身はまだ

「1時間で絶対に欲しい、けれど買い物に行く時間が無いもしくは近くで買えない(かつアマゾンのプライム・ナウで取り扱いがある)」

というシチュエーションになったことが無いためにまだ利用していませんが、いずれ使うことになるのだろうなと思っています。

便利さを体験すると、それがその人にとっての「当たり前」「スタンダード」になる

Prime Now(プライム・ナウ)は、サービス開始時期(2015年11月19日に世田谷区など8つの区を対象に開始)および対象製品数が限られていることより、まだ利用者の絶対数は小さいと推測されます。

しかし、ひとたびこのサービスを使い、注文後1時間もしくは2時間で製品が到着するという体験をした消費者にとっては、それがある種の「当たり前」「スタンダード」になり、そのように考える消費者はPrime Now(プライム・ナウ)サービスの拡大に伴いますます増えていくことになります。

今までは翌日(もしくは翌日以降)配送で十分と感じていたのに、一度この便利なサービスを体験することによって、その消費者の配送に関する期待値が大幅に変わるのです。

そしてその変化した期待値は、アマゾンに対してだけではなく、その他全てのネットショッピングでの配送に対しても、明示的にではないにせよ存在することになります。

これはアマゾン以外のネットショッピング提供事業者にとって、大きなプレッシャーになります。

業界が横並びで新しいサービスに対応し、全体として疲弊した事例

例えば業界は異なりますが、百貨店の年始営業を例に取ることもできます。

以前は年始を休日としていた百貨店ですが、ある百貨店が年始営業を開始したためにその他の百貨店も追随し、気付けばどこの百貨店でも年始からの営業を行っています。

消費者にとっては上述のように過剰なサービスかもしれませんが、消費者が「年始もやっているよね、初売りは1月1日からだよね」というように受け止め始めた結果(また業界内に限らない競合の状況を鑑みた結果)、止められなくなっているサービスの一例だと思います。

最近ようやく三越伊勢丹グループが、一部店舗で年始の営業を3日に繰り下げ、またさらにこの動きを進めるということでしたが、この決断が下されるまでにはずいぶん長い時間がかかっていますし、他の百貨店が追随して年始の営業を繰り下げるにはさらに時間がかかるでしょう。百貨店に関してはこんな記事も書いています。

www.yellowpadblog.com

アマゾン以外の事業者もがんばるしかない

配送に関しても、「そんなに急がなくていい」というコンセンサスが消費者側に形成され、事業者側がそれに添う形になる日が果たして来るのか?もしその日が来るとしても、それはだいぶ先になるだろうと思います。

業界がラストワンマイル(*)をどう克服するかを課題とし、「できるだけ早く届ける」ということを是としていることもその一因です。もちろんその裏には消費者からの要求があります。

身も蓋もない結論ですが、アマゾン以外の事業者は、一度アマゾンによって設定されてしまったハードルを越えるべく、

  1. アマゾン同様の、もしくは近しい配送サービスを提供する
  2. 配送とは違うところに、より大きな付加価値を作って提供する

のどちらか、もしくは両方をがんばっていくしかないと思います。

とはいえ1.は一朝一夕に出来ることではなく非常に大変なことであり(だからこそ、これを可能にしているロジスティックスがアマゾンの強みとなっており、そのようなこと・それに近しいことを可能にしますよというFBA、フルフィルメント by Amazonもあるのですが)、もちろん2.も従来以上にということでとても大変なことであるのですが。

最後に

アマゾン以外の事業者もがんばるしかないと書きましたが、特に上述の1.においては、それによって現在の物流システムやそこに従事する人にさらに負荷が掛かってしまうことも容易に想像できます。

消費者もある時にはサービス提供者となり、サービス提供者もある時には消費者となるので、また一度体験した便利さがその後その消費者にとっての当たり前になっていくので、利便性を追求しつつ過度に負荷が掛からない仕組みが必要だなと感じます。

負荷は上述のラストワンマイル(*)でも大きく起こっているので(再配達の件数が全配送数の2割に及んでいること等)、ここへのソリューションが全体の改善に繋がっていくのだろうなと思いますし、ここはまた調べてみたいところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

関連記事

yellowpad.hatenablog.com

*ラストワンマイル:もともと通信業界の用語で「通信事業者の最寄の加入者局からユーザの建物までのネットワーク接続のための手段のこと。 現在では特にインターネット接続の最終行程を指す。」ということですが(Wikipediaより)、現在では物流において「最後の配送拠点から消費者の手に渡るまで」を意味することもあり、本文中ではその意味で使っています。

今後もいろいろなエントリを書いていきますので、ぜひ読者登録をお願いします。

参考

Amazonプライム会員向けサービス「Prime Now」、東京23区全区でご利用可能に

タイトル画像はsindykids@flickerをお借りしました